ドクター 食生活と身体の退化 -先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響-

2015.08.07

虫歯は症状であり病気ではない。虫歯は栄養障害の証であって、口の手入れが悪いせいだと一般に言われていることとは全く違う。

 

栄養障害からくる退化現象を2つのグループに分けて考察することにしよう。

まず一方は、栄養が適切でなかったために病気になった人々にみられるもの。他方は、両親に栄養的欠陥があったために現われた機能障害などである。

 

前者の代表的な症状としては、虫歯、歯周炎、歯周病、種々の眼の炎症、弱視、壊血病、非癒着性骨折、再発性の痙攣性骨折、骨格障害、関節痛、かっけ、ペラグラ【イタリア等の南欧諸国に見る地方病で、不完全な食物の摂取または同化によりビタミンB、特にエアシン(抗ペラグラ因子=ニコチン酸)の欠乏に基づく疾病で、身体露出部の紅斑および落屑とともに全身症状が発現する(KATO’S医学英和大辞典)】、不妊症などがある。

第二のグループに属する障害は、親にビタミンやミネラルの欠乏があったために起こるもので、受精の前後にみられる出生前の障害を伴うことが多い。それによって生殖細胞が影響を受け、受精した卵子や胎児に奇形が生じることになる。

この第二グループに含まれるのは、兎唇、先天性口蓋裂、臀部狭小、顔面狭小、鼻孔狭窄、知的障害、少年非行、顔面骨および脳基底部の奇形、脳障害、ダウン症候群などの症状である。

 

今まで地理的に隔離されていたため、近代の商業活動と接することがなかったが、今や世界各地でそうした接触が大規模に進行しており、そうした地点では、もっとも悪い形で人間に退化が起こってきている。

 

虫歯予防の問題を考えるにあたって、絶えず念頭におかねばならない重要なことは、虫歯は現代の一連の身体的退化症状の中の単なる一つの症状にすぎず、歯が悪化しているということは身体の他の部分でも悪化が進行しているということである。したがって、フッ素による処置は、抜歯と同様、虫歯に対する万能薬なのではない。

 

植物と動物の成長および骨や歯の発達には適度なフッ素が必要であるが、度を越すと障害を起こすことは明らかである。

 

その内容は、どの国、どの地域でも、食生活の「変化」が、口腔内だけでなく、顎顔面、さらに身体全体に退化として著しい病的変化をもたらすばかりでなく、精神的にも変化をきたしていたという驚くべき事実である。それに対して、その土地の自然の恵みだけで自給している人びとの身体的、精神的な素晴らしさは目を見張るばかりである。

 

私たちの社会では、加工食品が氾濫し、かつ季節を問わず農産物の入手が可能な状態にある。一見豊かさと便利さに優れているように見えるが、心身の健康にはどうか。次代を担う若者の健康問題について、危惧の念を抱かざるを得ない。

 

遺伝は複雑な特質をもっており、ある意味では不滅ともいえるが、それ自体は純粋に物質的な現象である。それは蛋白質、ミネラル、ビタミンなどを単位とした遺伝子と呼ばれる物質から構成されており、遺伝が次の世代に受け継がれていくには、この遺伝子が両親の特別な生殖細胞によって再構成される必要がある。これが完全に再構成される限りにおいて、身体的および生理学的な遺伝特性が完全に受け継がれていき、人格とか性格という形で遺伝が現われるのである。近代化された先住民からは、現代の心身障害者にみられる異常な性格やそれに随伴する身体的欠陥をもった非行少年が生み出される。先住民たちのこうした堕落は、遺伝によって起こったものではなく、遺伝が妨害されたことによって生じたものである。その子供たちは両親から生まれたのであって、外的な環境が生んだわけではないことだけは確かである。彼らの障害は受胎のときにつくり出されたものであり、その障害は決して治すことはできないけれど、しかし適切なる教育と両親の適切な食生活があったなら、事前に防止することはできたはずである。

 

健康な人びとの秘訣を探し求めてプライス博士は世界中を旅した。

 

これらは真実です。

 

 

また、日本歯科大学名誉教授の丸茂先生は以下のように述べています。

「同じ民族内部で突然に歯列不正が出現してきたり、同じ親から生まれた子供でも、ある時を境に、それ以降に生まれた兄弟はみな歯列不正が出現したと報告している。その境とは伝統的な文化や生活様式・食品を奪われた瞬間であろうと述べている。伝統的な文明に従って生きている間は、歯列不正、う蝕や歯周病などの口腔内疾患だけでなく、犯罪者や精神病者もいないと報告している。しかし、伝統的な生活をしている民族や地域に近代文明という商業主義が侵入してきてから、そこを境目に、歯列の変形や歯槽骨・顔面の変形だけでなく上記に述べたパンドラの箱を覆したような状態になると述べている。近代文明に蹂躙された伝統的生活は様々な病的状態をもたらすと述べている。現代でも、不正歯列が著しいとか、歯槽骨が歪んでいるなどの形態的特徴や、精神活動の異常さなどが認められる時は、患者の食生活だけではなく、生活様式全般にわたって調査する必要があろう。Priceは当時の矯正医や臨床家が睡眠癖や呼吸時の悪習癖が歯列不正を作るとしていることに対して、伝統文化を離れた生活様式を同じくする者であれば、単一世代でも肉体の変化だけではなく、道徳や知性も低下すると述べている。」

 

※『食生活と身体の退化』 W.A.PRICE 著  株式会社 稲田文宏社

食生活と身体の退化

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