当院の保険クラウン・ブリッジ製作の流れ
加藤歯科医院では3人の優秀な技工士が在籍しているので全ての工程を当院で行っています。
自費・保険問わず、技工士が歯科医師とともに色合わせ・噛み合わせなどについて、患者さまも交えて話し合いの場を設けているのが加藤歯科医院の強みでもあります。
- ・支台歯及び周囲の歯周組織の環境が整っていること
- ・適切な支台形成であること
- ・歯肉圧排ができていること
- ・適切な印象方法、印象材料を使用していること
1.形成
修復物、補綴物にとって必要な、保持力・審美性・咬合関係・強度・適合性が得られる形態になるよう形成しなければなりません。
使用するもの
滅菌済みのタービン・コントラ
形成用のバー
8倍のスコープ
2.圧排系
歯肉溝液や出血をコントロールし正確な歯頚部ラインの印象採得が行える方法です。
この結果、歯頚部ラインに歯肉が被ることなく確実な印象採得が行えます。
圧排糸を入れ、5分間そのままにしておきます。
※全ての症例で必要な訳ではありません。
3.印象採得
修復物、補綴物にとって必要な、保持力・審美性・咬合関係・強度・適合性が得られる形態になるよう形成しなければなりません。
口の大きさにあったトレーを
選びます(上顎/下顎)
てきおんくん
寒天を64℃で保ちます
印象材・ヘレウスワルツァージャパン(株)のアルギノプラストEMノーマル
らくねる、
アルジネート錬和機
粉(アルジネート)を片顎ならスプーンすりきり一杯、全顎なら 二杯か三杯冷水を軽量カップで測り、粉と混ぜます。『らくねる』で20秒練和します。トレーに印象材を盛ります。
- ・支台歯をエアーでしっかり乾燥します。
- ・寒天をマージンや可動にそわせて流し込み、その上からアルジネートを盛ったトレーを入れます。
- ・室温によって違いがでますが、約4分で固まります。
- ・口腔内からはずす時は、淵からエアーをかけ、外れやすくした後にゆっくり平行にとります。
4.バイト(かみ合わせ)
モリタの「パーフェクトフィム(30バイト)」
バイト材をしっかり噛んでいただきます。30秒で固まります。
上下の歯がしっかり噛んでおり、バイト材に穴が開いているか確認します。
5.グルマ
- ・神経のある歯から、冷痛など起こらないように神経を保護する薬です。
- ・液を歯に塗布し、エアーでゆっくり乾燥します。
6.レジンシール
- ・形成で鋭利な所を保護します。
- ・神経のある歯を刺激から保護します。
- ・粉と液を筆で混ぜながら、支台歯につけます。
7.テック(仮歯)
- ・全体にわたって正しい咬み合わせを作るためには、何度も調整します。
- ・清掃性を高めた仮歯を作ることにより、歯ぐきの健康を促します。
- ・治療中でも歯がある状態を維持します。
- ・神経のある歯を刺激から保護します。
- ・補綴物が出来上がるまで歯列や咬合が動かないように保護します。
- ・見た目を維持できます。
8.印象採得
寒天-アルジネート連合印象は、印象採得後すぐに変形が始まります。
大きく変形が始まるのが7分後なので、7分以内に石膏を流す必要があります。
石膏を流す前に、マイクロスコープを使って印象をチェックします。
9.印象時のチェック項目
印象材がトレーから剥がれていないかチェックします。
印象材練和時に混入した気泡の巻き込み、しわ、撤去時のちぎれはないかチェックします。
歯頚部ラインラインや軸面に血液・滲出液による、なめられ。
トレーに粘膜面が当たっていないかチェックします。
歯牙が一次印象面(アルジネート)に当たっていないかチェックします。
一次印象と二次印象(寒天)の間に隙間があり、大きな内部気泡になっていないかチェックします。
形成の不備はないか(アンダーカットの有無、歯頚部ラインの不明瞭など)チェックします。
10.石膏の注入
石膏を注入するときは混水比を測ります。(石膏50g、水17cc)
先が細く丸いインスルメントなどで、支台歯内部から注入します。
その後、歯頚部ラインの外側に石膏を注入すると、歯根につながる面をきれいに再現することができます。
下顎の5番。MCの印象。
サンロック(DENTSPLY-sankin)使用。超硬石膏。
混水比はメーカー指定通りに行う。
30秒、真空撹拌機にかける。気泡を抜く。錬和します。
気泡が入らないように、慎重に流します。
保湿機に入れることで、印象材の離水による変形をおさえます。
11.作業用模型
補綴物と支台歯との適合が良くても、支台歯模型と土台模型との戻りが悪いと結局不適合と同じになります。
可撤式模型法は、操作性が良いというメリットがありますが、分割しているため位置的な関係に
狂いが生じる可能性があります。
その狂いをなるべく少なくするために、工夫が必要となります。
超硬石膏が硬化し、印象から外した状態です。
必要のないところをトリマーで削ります。
土台となるアタックトレーに土台用の石膏を入れて硬化を待ちます。
患者さんの口腔内で採得した噛み合わせを上下顎の模型に合わせ、口腔内を再現します。
咬合器に取り付けます。
咬み合わせが高い、主な原因として…
- ・印象の膨張
- ・石膏の収縮
- ・咬合採得のミス、変形
- ・模型の浮き上がり
- ・咬合器付着時の石膏の収縮によるズレ
- ・メタル時の咬合調整不足
- ・メタルと支台歯の不適合(オーバー歯頚部ラインなど)
以上があげられます。
特に、咬合器付着が終わった後は、咬合紙を咬ませ、確実に咬合しているか確認する必要があります。
支台歯となる部分を、ノコギリで分割します。
支台歯のトリミングは全て、10倍のマイクロスコープを用いて行います。
支台歯のアンダーカットを、ブロックアウト(封鎖)して、セメントスペースとなるスペーサーを塗布します。
12.ワックスアップ
ワックスアップは、欠損部を三次元的に再構築する作業です。
そこには、形態回復にあたって、単に必要条件を満たすのみではなく、機能面や歯周組織への配慮が、 造形美というものになって表現されます。
適切な材料・正しい技法を用いて、効率良く、完成度の高いワックスアップを考えなければなりません。
ワックスには、用途に応じて色々な種類があリ、大きく分けて、軟質・中硬質・硬質があります。
- a)内面コーティング用ワックス 軟質
- 粘性があり、歯型に密着させるために使用します。
- b)歯頸部用・コーピング用のワックス 中硬質
- 歯頚部ラインより、歯冠全体の郷土を確保します。
適度な硬さがあり、パターンを抜くとき微妙なアンダーカットがあってもある程度もちこたえてくれます。 - c)形態回復用ワックス 硬質
- 使用ワックスの中で、もっとも硬く、かつ脆いので彫刻しやすく開窓が容易です。
- d)歯頚部ライン用ワックス 軟質
- 低粘性であるため、切れが良いです。
ワックスを用いて、ワックスアップを行います。
マージンの確認は、必ずマイクロスコープを使用します。
13.埋没・鋳造
この埋没・鋳造のトラブルは、全工程の中でもダメージが大きく、高い頻度で問題を起こしてしまいます。
そのため「計量」や「時間設定」など、より一層慎重に行う必要があります。
小・中・大と、さまざまな大きさのリングがあり、大きさによって混水比をコントロールしなければなりません。
埋没用石膏材FF20-EX粉100gに対して水35ccの混水比。撹拌機で、1分間よく練和します。
バイブレーターを用いて、気泡が入らないように埋没を行います。
35分放置。硬化を待ちます。
35分後、専用ファーネスに入れて加熱します。設定温度は700℃。1時間係留し、リング内のワックスパターンを完全に溶かします。
アルゴンキャスターiを用いて、完全に溶かしたワックスパターンの空洞にパラジウム金合金を流し込みます。
14.研磨・完成
―最終調整の意味、目的意識―
内面調整 | 正確な位置への適合 |
形態修正 | 歯頚部ライン部のカントゥアー・エマージェンスプロファイルの付与 |
コンタクト・バイト調整 | 機能回復 |
つや出し研磨 | 清掃性の向上・審美的な患者の満足(商品的価値) |
取り出した鋳造体鋳造体表面に焼きついた酸化皮膜を除去します。上の清掃材をビーカーに入れて、超音波洗浄機で酸化皮膜を除去します。
酸処理で除去仕切れなかった埋没材や、酸化膜は、サンドブラスト処理を行います。
研磨専用のバー
形態を損なわないように磨きます。
最終研磨・調整で最も大切な作業は内面調整です。わずかな内面の荒れ、気泡でも障害となります。 支台歯模型を傷つけることなく、スッと入り、逆さにしても落ちない程度が理想です。
この行程が一番難しく、また、時間もかかり、技術と経験を要します。 歯頚部ラインの確認は、必ずマイクロスコープを用いて行い、完成となります。 これを患者様のお口の中に入れて、適合性、紙あわせを整え最終装着となります。 技工の作業は数ミリ単位で行っています。
印象採得や石膏を扱う行程で、膨張や収縮を繰り返すため、わずかな誤差でも不適合となる場合があります。 そのわずかな誤差から生じた隙間に食べ物のカスが詰まり、むし歯になるリスクも高まります。 より良い補綴物を患者様にご提供する為に、再度お作り直しをさせて頂くこともあると思いますが、ご理解の程、宜しくお願い致します。
また、咬み合わせの関係で、補綴物が外れるという可能性もないとは言えません。
以上のことを踏まえた上で、歯科医院での定期的なケアをお勧めいたします。