フェイスボウトランスファー

フェイスボウトランスファーとは、患者さんの顎関節と上顎の位置関係を、補綴物を作るときに使う「咬合器」上に再現することです。

顎の関節は、他の関節と違ってとても複雑な動きをします。なるべく患者さんのお口の状態に合わせた状況で補綴物を製作し、顎への負担やセット時の調整を軽減するために、フェイスボウトランスファーを実施します。つまり、フェイスボウトランスファーによりはじめてチェックバイト法などによる下顎運動再現時の精度を、臨床上問題の生じないレベルまで高めることができるということです。

フェイスボウトランスファーの流れ

1.フェイスボウ装着

フェイスボウ装着 顎関節と上顎の位置関係を記録する。(フェイスボウとは図の器具のことをいう)
フェイスボウ(耳のアップ) 左右の耳に固定棒(イヤーロッド)がしっかり入っていることを確認しネジを締める。
フェイスボウ正面 顔貌の基準点(眼下窩縁)を調べる。

2.咬合器装着

咬合器装着 咬合器装着2

「1.フェイスボウ装着」の記録を咬合器に移す。

顎関節と上顎の位置関係を咬合器に移すことで患者さんの口腔内の動き(下顎運動)が再現できます。

正面
正面(口腔内写真) 正面(模型写真)

右側方運動
右側方運動(口腔内写真) 右側方運動(模型写真)

左側方運動
口腔内写真(左側方運動) 模型写真(左側方運動)

加藤歯科医院では、顎関節に異常のある方噛み合わせの安定しない方の治療に活用しています。

 フェイスボウトランスファーの効果

  1. ボンウィル三角の再現
  2. バルクウィル角の再現
  3. 蝶番開閉口運動軸の再現
  4. 下顎開閉口路の再現
  5. 補綴物における早期接触の予防
  6. 下顎運動の再現性の向上
  7. アンテリアガイダンスの設定基準が得られる
  8. 歯軸と被蓋の設定基準が得られる

 

※フェイスボウトランスファーを行わずに模型を咬合器に装着した場合は、下顎の運動軸と咬合器の開閉口軸が一致せず、閉口路に誤差が生じてしまいます。もしAの位置に模型を装着した場合、咬合器上では一見適正な咬合関係が設定されても、実際の開閉口路とは異なるため口腔内ではBのように早期接触が生じ、補綴装置の調整量がその分多くなり、咬合面形態にもその影響が及んでしまいます。

フェイスボウトランスファーによる早期接触の予防

 

診査のポイント

歯列と歯槽の骨格的な不適合を診査

  1. 骨と歯列の彎曲が一致するか
  2. 歯根と歯冠の軸が一致しているか
    • 1.2.はレントゲン、模型の双方で検証
  3. 顎運動や顆路角を調べ、歯列の彎曲との一致、咬合様式の破壊がないか調べる
    • 骨格的咬合分析
  4. 習慣性主咀嚼側の咬合様式に片側性平衡咬合が成立しているか
  5. 骨格的な歯列形態に問題がなければ、歯の咬合面の白さや角度などの咬合関係という咬合面分析を実施する
  6. 5.が問題なければ、咬頭傾斜や咬合接触点の位置など咬合面形態を検討する
  7. 6.が問題なければ、各種の顎位や顎運動時の接触状態を検討する咬合様式を診査する

 

参考書籍

「補綴臨床別冊 図解・咬合採得」
医歯薬出版株式会社
「Dental Frontier QA 2001 Winter 14」
丸茂 義二 先生   株式会社デンタルダイヤモンド社

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