Question
義歯があるのは何のため?
Answer
義歯は食事を摂るために必要なものであることは皆さんもお分かりでしょう。では、食べられなくなったとき義歯は必要なくなるのでしょうか?
実際、「経口摂取をしていないから」という理由で義歯をはずされるのはよくあることですが、それが常識のように感じてはいませんか?
実は義歯は食べること以外に、様々な面で多くの役割を担っているのです。
私たちは1日に1.5lもの唾液を出し、飲み込んでいます。経口摂取していない人が、誤嚥性肺炎を繰り返し起こすのは、自分の唾液の嚥下や痰が処理できない口腔になっていることが大きな要因となっています。
義歯の役割
●残っている歯を助ける
●嚥下時の圧力を高める
●顔貌を整える
●下顎の場所を固定する
●咬むことにより脳へ刺激を与える
●言葉がはっきりする
●直立した姿勢が安定し、歩行の安定にもつながる
欠損部分を義歯で補い、上下の歯があることにより下顎のあるべき場所が確定します。そうして下顎が固定されることによって嚥下時に舌に力を入れやすくなり、その結果嚥下圧が高まり、誤嚥のリスクが低くなります。歯の欠損が多い場合に、義歯がこれを補っていないことが誤嚥のリスクを高めるのです。また、パーキンソン病や抗精神病薬が投与されている場合によく見られる常にモグモグするような顎の動きが、義歯がなく下顎が固定されない場合に出てくることがあります。歯がないと顎が落ち着く場所がわからず、様々な問題につながります。
また咀嚼できる歯があるからこそ、下顎が常に上顎を突き上げ脳への刺激にもなります。更に、よく噛むことは唾液を出し、消化を助け、舌や頬を使うことで機能維持や口腔内の自浄作用にもつながります。
そのほか部分義歯の場合は、装着することで残っている歯にかかる負担を減らすことができます。義歯がないと残りの歯に負担がかかり、そしてそれらの歯が徐々に駄目になり、義歯は更に大きくならざるを得ません。
このように義歯は食べることを助けるだけでなく、義歯を装着したら顔貌が整うことで若々しく見えるというのはよくある話で、言葉もはっきりし、体の平衡感覚が保たれ歩行の安定にもつながり、ひいては外出する気持ちが芽生えることも想像できますね。
つまりその人が、身体的にも精神的にも社会的にもその人らしくあるために、義歯は必要なのです。