Question
糖尿病になっていますが、歯周病による口腔機能低下が及ぼす影響について教えてください。
Answer
歯周病の進行による歯の喪失は、咀嚼機能を低下させます。また、重度の歯周病では、味覚障害の症状が出現します。それらの口腔機能の異常は、糖尿病や糖尿病合併症の悪化に関与します。詳細は下記をご確認ください。
1.歯の喪失が引き起こす食後高血糖
家族歴のある非肥満糖尿病や高齢者の糖尿病には食後高血糖が多くみられることは広く知られています。食後高血糖は、食事を摂取してすぐに分泌されるインスリン追加分泌が遅延するのが原因と考えられています。食事の際に、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維を先に食べ、糖の吸収を緩徐にすることで、食後高血糖を抑えることができます。
歯周病によって残存歯の減少に伴う咀嚼障害を来たすと、硬めの食物である食物繊維や魚や肉の摂取が困難になるため、それらを最初に食べることが難しくなり、その結果、食後を中心とした血糖悪化を来しやすくなります。また、摂取できる食べ物も、容易に咀嚼できるうどんやおかゆなど炭水化物に偏るため、さらなる食後高血糖を惹起しやすくなります。食後高血糖は動脈硬化性疾患を促進することにも関与しているため、結果として心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを増加させることにもつながってしまいます。
2.歯の喪失が引き起こす味覚障害と低栄養
亜鉛欠乏が味覚障害を引き起こすことは広く知られています。動物性たんぱく質には、味蕾の再生の原料となる亜鉛が多く含まれています。残存歯の減少で、それらの食物の摂取が減少することは味覚障害が引き起こされる一因となる可能性があります。また、たんぱく質の摂取が不足することで、フレイル、サルコペニアを引き起こし、筋肉量低下や運動量低下に伴う血糖上昇を引き起こします。
3.味覚異常が及ぼす糖尿病合併症への影響
歯周病の悪化に伴う味覚障害が高度になると、食事の味付けを濃くし、塩分摂取量を増加させてしまいます。塩分摂取量の増加は糖尿病性腎症の悪化を引き起こし、透析増加のリスクにもつながります。塩分摂取量の増加は高血圧も助長するため、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスク増加にも関係します。
※参考書籍
「日本糖尿病協会登録歯科医 認定テキスト」
公益社団法人 日本糖尿病協会