Question
口腔カンジダ症について教えてください。
Answer
口腔カンジダ症とは
口腔カンジダ症とは真菌の一種であるcandida菌、特にcandida albicansによる口腔粘膜の感染症で、口腔の真菌症の中では最も多い疾患です。しかし、それほど頻度の高い疾患ではありません。
口腔カンジダ症の原因
candida albicansは健康な人の口腔からかなり高率に検出される口腔常在菌で、舌背の後部で最も容易に見いだされ、健康な人の約50%で培養検出できます1)。しかし、病原性は乏しく、感染が成立することはほとんどありませんが、免疫の不調がカンジダ症の臨床症状を発現させる原因になると考えられています2)。そのほか、白血病、悪性腫瘍、天疱瘡、糖尿病などの患者さんで抵抗力が減弱すると発症することがあります3)。AIDS患者にもしばしば見られます。したがって、一般に、成人の口腔カンジダ症では、それらの基礎疾患があるかどうかを考慮する必要があります。しかし、明らかな基礎疾患がなく、服薬の既往歴のない人でも、乳幼児や高齢者、妊婦などが稀に発症することがあります。
全身的な発症要因の他に、局所的な発症要因として、口腔乾燥症や口腔清掃の悪さ、慢性の粘膜外傷、抗生剤の局所使用、ステロイド剤の吸入や局所使用などがあります4)。
口腔カンジダ症の症状
その臨床症状は、白色の点、あるいはパッチの苔状付着物が見られ、それはガーゼなどでこすると容易に取り除けます。そして、取り除いた後の粘膜面は紅潮している場合が多くあります。そのような白色の付着物は、頬粘膜や舌などに生じやすく口蓋にも見られますが、歯肉に生じることは稀です。
口腔カンジダ症の治療
商品名「フロリードゲル経口用2%」を口腔内にまんべんなく塗布、または口腔内に含んだ後に少量ずつ嚥下するという方法で使用されます。この薬剤は、ワルファリン服用者や妊婦には禁忌です。そのほか、全身的に投与する薬剤として、深在性真菌症治療薬であるフルコナゾールやイトラコナゾールも効果があります。
そのほか、0.2%のクロルヘキシジンの含嗽剤が効果的である場合があります。
1) Bork, K. et al.: Diseases of the oral mucosa and the lips. W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1996, P. 152
2) Mackie, R.M. et al.: The relationship in chronic mucocutaneous parameters and response to therapy in resistant oral candidiasis. Br. J. Dermatol., 98: 344 – 348, 1978
3) 伊藤秀夫:口腔カンジダ症、In「口腔病変診断アトラス」医歯薬出版、東京、1980
4) Laskaris, G.: Color atlas of oral diseases. Diagnosis and treatment, 4th edition Thieme, Stuttgart, 2017
※参考書籍
「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著 株式会社ストマ