Question

誤嚥性肺炎の予防法として、食事のときおよびその他気をつけることを教えてください。

Answer

誤嚥を防ぐためには、食べ物をしっかりと食べて、飲み込むことが重要です。いくつか、注目すべき点を挙げていきましょう。

1.食形態について

まず、本人の食べる能力に合わせた食形態で食事が提供されているか、そのことを確認しましょう。摂食嚥下障害がある場合、その人に合わせた食形態がすすめられているはずですし、学会基準などに併せて標準化されています。

ただし、その人に適した食形態というのは変化します。摂食嚥下の能力が向上することもあれば、低下してしまうこともあります。また、病状や体調が安定している場合、頻回な評価・査定を受けることができず、いつの間にか能力と食形態のミスマッチが起こっているということもありえます。

さらに、在宅で容体が落ち着いている人などは、「元気になってきたので、少し形のあるものに挑戦してみよう」ということで、無理して能力に合わないものを食べているケースもあります。

しっかりと食事を摂ることで噛む力が復活し、食形態が上がることがありますし、残念ながら形態を下げなければならない場合もあります。誤嚥性肺炎予防という観点からすれば、能力に合わない食形態のものをムセながらも必死になって口にし続けるよりは、安全・快適に食べられるものをしっかりと食べ、体力や食べる力の回復を待ったほうがよいともいえます。まずは、その人の食べる力と提供されている食事の関係が適切なものであるかを確かめましょう。

 

2.食べる姿勢について

●ムセやすい姿勢を避ける

食べる姿勢というのも重要です。麻痺が残るような脳血管疾患発症後は、その人に残された機能を生かして食べる方法というのも検討されます。それには食べるときの姿勢や、食具の使い方なども含まれます。そして、これも時間の経過のなかで機能を取り戻したり、あるいは失ったりすることもあり、その推移を見守ることも必要で、個別性も高いものといえます。

ただし、一般的にムセやすい食べる時の姿勢というものもあります。「アゴが上がったままの姿勢」はその例です。このまま飲み込むと、食事が一気に気道に入りやすくなります。そのため、こうした姿勢にならないように環境を整えることが重要です。

アゴが上がるというのは、テーブルで食事をしている場合、イスの背で背中が支えられていなかったり、あるいは足がしっかりと床に付いていない状態で身体が動きやすくなったりしている場合によく起きます。

 

テーブルでの食事の姿勢

テーブルでの食事の姿勢

 

ベッド上での食事の場合、そもそも上半身がしっかりと起こされていない場合、アゴが上向きになりがちです。食事の際にはベッドの背をしっかりと起こし、それでも頭頚部が安定しない場合は首周りにクッションなどを入れてアゴが下がるような形にします。目線がやや下を向くような姿勢です。

ベッド上での姿勢

ベッド上での姿勢

 

また、食事中もそうした姿勢が崩れないかチェックするといいでしょう。「いただきます」のときは大丈夫だったけれども、身体が動いて最終的には上向きになって無理に飲み込んでムセていた、ということもありえます。

 

●座り方のポイント

ベッド上で食事をされる人の多くは自分で体位を変換できない人です。そのため、誤嚥のリスクだけでなく、褥瘡のリスクも高くなります。

ここで、ベッドでも椅子でもいいので、いちばん理想的な座り方について考えてみましょう。

理想的な座り方とは、最も安定した座位を指します。それは骨盤の左右最下部にある坐骨と尾骨の3点で座ることです。この3点で座ることができているときを「骨盤が立っている状態」といいます。要介護者だけでなく、健常者でも長く座っていると徐々に骨盤が寝てきます。いわゆるずっこけ座りといわれるものです。

 

ずっこけ座り

ずっこけ座り

 

この姿勢では体重の多くが仙骨にかかり、普通は座り直しをしますが、要介護者は座り直しができない状態で長い状態を過ごすことになり、四肢、頸部、体幹の筋肉に不必要な緊張がかかります。こうした状況だと食事を食べる時や食事以外でも唾液を飲み込むときにうまく嚥下できず、誤嚥を繰り返すことになります。

ずれをなるべく少なくするために、背部と仙骨の背面への接触や下肢・足底の接触に留意します。つまり背もたれへの接触面積が大きく、均等に重量がかかっているほど、ずれが生じにくいといえます。また下肢や足底でストップを効かせ、ずれないようにすることが大切です。椅子の場合もベッドの場合も、両足がしっかりと接地(接触)していること、これが飲み込むためには大切です。

 

3.食事以外で気をつけること

誤嚥性肺炎は口から食事ができる人にのみ発症する疾患ではありません。

唾液の誤嚥や、胃食道逆流などでも細菌や微細な食塊などが気管に入り込み肺炎を起こしてしまいます。口から食べていないからこそ、その口はなおざりにされている場合も多く、誤嚥性肺炎予防が重要になってきます。

胃食道逆流対策としては、経口摂取ができる人でもそうでない人でも、栄養剤注入後(口から食べている場合は食事後)はすぐに横にならず、しばらくは起こしたまま(起座位)としましょう。同じように、就寝する際もできれば完全に水平位とせずに、できれば頭部を居城した姿勢であるとよいでしょう。とにかく、食後すぐに身体が横になることだけは避けてください。

 

※参考書籍
 「口にかかわるすべての人のための誤嚥性肺炎予防」
 米山武義 編著 医歯薬出版株式会社

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