Question
インプラント治療後、関節リウマチを発症しました。影響ありますか?
Answer
関節リウマチは日本人においては0.5~1%に発症することが知られています。
疾患の進行により関節痛が生じるようになりますが、痛みは初期には手足の指の関節(特に近位指節間関節)に生じ、次第に手首、肘、膝などの体幹に近い大きな関節の痛みを感じるようになり、その痛みは動作により増強するため、無意識にその関節を動かさなくなる傾向にあります。
さらに関節炎が進行すると関節自体が変性し、滑膜細胞の増殖、軟骨の破壊と骨のびらん形成が進行して、最終的には関節という構造物が破壊されて骨と骨が直接接した「強直」という状態になります。指の骨が強直することで変形が生じ、関節リウマチの患者さんに典型的な手の形を呈するようになります。
このように関節リウマチの病状が進行すればするほど、患者さん自身でのブラッシングを含む口腔清掃の実施が困難になることは、想像しやすいでしょう。
リウマチ治療の第一選択として用いられる抗リウマチ薬は、その作用機序から「免疫調整薬」と「免疫抑制薬」に分類されます。すべての免疫機能を非特異的に抑制する免疫抑制薬は、免疫低下に伴う易感染の状態に繋がる可能性があるため、インプラント治療後にこのような薬剤の服用が原因で、インプラント周囲の感染、炎症が惹起される可能性もあります。さらに抗リウマチ薬の中には、副作用として骨髄障害を有するものもあり、インプラント周囲の骨代謝に影響を与える可能性もあります。
また、抗リウマチ薬は遅効性であり、多くの効果発現まで2~3カ月を要することから、その期間の関節内の炎症のコントロールや炎症増強時にはステロイド薬が用いられることも珍しくはありません。このステロイド薬も免疫抑制による易感染の状態を惹起するため、長期服用により感染のリスクは増大します。
さらに、ステロイドの副作用としてもう一つ重要なものに骨粗しょう症があります。高用量、長期間の服用によりステロイド性骨粗しょう症の発症リスクが増大し、それに対してビスフォスフォネート系製剤(BP製剤)の処方を受けている患者さんも少なくありません。
関節リウマチが発症・進行して、手指の拘縮などにより細かな動きを伴う通常のブラッシングが困難な患者さんは、口腔内の状況が天然歯、インプラントにかかわらず、音波ブラシを用いた清掃も考えていただきたいと思います。
※参考書籍
「65歳以上の患者へのインプラント治療・管理ガイド」
編著 窪木拓男、菊谷 武
株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ