Question

睡眠時ブラキシズムは危険だと聞きました。そのままにしておくとどういうことが起きるのですか?

Answer

睡眠時ブラキシズムは、様々な症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

睡眠時ブラキシズムが引き起こす可能性のある症状(文献1)より)

部位 症状
咬耗、アブフラクション、歯の破折、知覚過敏、歯髄炎
補綴装置 補綴装置の脱離・破壊、インプラント体の破損
歯周組織 咬合違和感、辺縁性・根尖性歯周炎の増悪、外傷性咬合
咀嚼筋 咀嚼筋違和感、疲労、痛み、咀嚼筋肥大
顎関節 顎関節違和感、疲労、痛み、開口障害、下顎頭変形、関節雑音
口腔内骨組織 下顎隆起、口蓋隆起、外骨症
口腔粘膜 舌・頬粘膜の圧痕
頭頸部 緊張型頭痛、肩こり
その他 歯ぎしり音による睡眠同伴者の睡眠障害

 

睡眠障害国際分類第3版2)によると、睡眠時ブラキシズムは『睡眠関連運動異常症』に分類され、「食いしばりや歯ぎしりあるいは下顎の強張りや突出しのような特徴のある反復性の顎筋活動」と定義されています。また、日本睡眠歯科学会では「顎口腔機能系に為害作用を及ぼす、睡眠中の持続的な、あるいはリズム性の咀嚼筋活動による顎運動(歯ぎしり、食いしばり等)」と定義されています3)

 

ここで注意すべきは、睡眠時ブラキシズムは、睡眠中の生理学的咀嚼筋活動である律動性咀嚼活動(Rhythmic Masticatory Muscle Activity; RMMA)4,5,6)が基準値を超えた場合の診断名(病名)であり、現象(筋活動あるいは顎運動)一つひとつのことを指すものではないということです7)。そして、一般集団の約8%が睡眠時ブラキシズムに罹患しており、健常成人でさえ約60%がRMMAを行っていると報告されています4)

 

1)中野雅徳、坂東永一:咬合学と歯科臨床-よく噛めて、噛み心地の良い咬合を目指して. 医歯薬出版, 東京, 2011.

2)American Academy of Sleep Medicine: ICSD-3 International Classification of Sleep Disorders 3rd ed. Diagnostic and Coding Manual. American Academy of Sleep Medicine, 2014.

3)猪子芳美 他:睡眠歯科の用語集 日本睡眠歯科用語検討ワーキンググループ. 睡眠口腔医学、5(1):12-15, 2018.

4)Lavigne GJ et al: Sleep Medicine for Dentists: A Practical Overview. Quintessence Publishing, 2009.

5)Lavigne GJ et al: Genesis of sleep bruxism: motor and autonomic-cardiac interactions. Arch Oral Biol, 52 (4): 381-384, 2007.

6)Rompré PH et al: Identification of a sleep bruxism subgroup with a higher risk of pain. J Dent Res, 86 (9): 837-842, 2007.

7)鈴木善貴:睡眠時ブラキシズムの基礎と最新の捉え方. 睡眠口腔医学, 3(1):10-21, 2016. 

 

※参考書籍
 「徹底解説!ナイトガード」
 鈴木善貴、松香芳三、大倉一夫、安陪 晋、鴨居浩平 著
 医師薬出版株式会社

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