Question
矯正治療は歯の根っこが吸収すると聞いたのですが、どうなのでしょうか?
Answer
矯正歯科治療にともなう歯根吸収は、ワイヤーのシークエンスやブラケットの種類によって影響を受けることはないものの、外傷の既往や歯根形態、大きな矯正力は歯根吸収のリスク要因になります。
治療に関連するリスク要因
- 治療期間
- 歯の移動距離
- 矯正力の大きさ
- 矯正力の種類(一定の力vs継続的な力、装置の種類、力の方向)
など
患者のリスク要因
- 外傷の既往
- 遺伝的要因
- 薬剤(フェニトインなどの抗炎症薬)
- ホルモン欠乏
- 副甲状腺の機能低下
- 歯槽骨の骨密度
- 歯内治療の既往
- 不正咬合の種類
- 歯根形態
- 全身疾患
- アレルギー疾患
- 喘息
- 慢性アルコール中毒
- 年齢
- 性別
Weltman B, Vig KW, Fields HW, Shanker S, Kaizar EE.Root resorption associated with orthodontic tooth movement:a systematic review. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2010 Apr;137(4):462-76.
Malmgren O, Goldson L, Hill C, Orwin A, Petrini L, Lundberg M. Root resorption after orthodontic treatment of traumatized teeth. Am J Orthod. 1982 Dec;82(6):487-91.
「歯根吸収は主に上顎前歯で起こり、平均1.4mmを超えることが示された。最大の歯根吸収は、上顎側切歯および歯根形態異常(ピペット状、尖っている、分裂している)のある歯に認められた。成人の患者は、小児の患者よりも下顎前歯部における歯根吸収の量が有意に多いことがわかった。」
Sameshima GT, Sinclair PM. Am J Orthod Dentofacial Orthop 2001; 1 19(5):505-510.
「臨床研究での発生率はさまざまである。矯正歯科治療後の歯根吸収の多くは、歯の寿命や機能低下に関係しない。歯根吸収の研究の多くは、その病因と予測可能性を明らかにしようとするものであるが、いまだ不明な点が多い。個々の感受性、遺伝的素因、矯正歯科治療に関連する全身因子、局所因子、解剖学的因子は多くの文献で引用されている。歯根吸収に関して多くの研究があるものの、それぞれ異なる方法で行われているために結果と結論を比較することができない。」
Brezniak N, Wasserstein A. Am J Orthod Dentofacial Orthop 1993; 103(1):62-66.
※参考書籍
「矯正歯科のための重要16キーワードベスト320論文」
監修 小野 卓史/小海 暁 クインテッセンス出版株式会社