Question
口の中が痛いので歯医者に来ました。頬の粘膜が白色と紅色の斑になっているのですが、病気でしょうか?
Answer
白色と紅色の病変で潰瘍を伴っている場合は、次の3つの疾患のうちのいずれかである可能性が高いと考えられます。
扁平苔癬
中高年に好発する慢性疾患で、診断候補の3つの疾患のなかでは最も一般的です。外観は委縮型(びらん性)疾患に典型的なもので、角化性の白斑に紅斑および浅在性潰瘍が合併します。通常、臼歯部頬粘膜の病変の範囲はそこまで広くなく、膨隆しています。
苔癬様薬物反応
苔癬様の副作用を生じる薬剤は多くあります(例えば、血糖降下薬など)。
苔癬様反応は局所的(例えば、修復物に対する反応)あるいは全身的に発生し、通常は薬剤が原因です。扁平苔癬ではなく苔癬様薬物反応と考えられる場合の特徴は、急性発症、広範な潰瘍、非対称的な病変の分布、重症度の高い舌背部などが挙げられます。また、扁平苔癬の発症頻度が低い口底などに認められることもあります。苔癬様反応は臨床所見から扁平苔癬と鑑別することはほぼ不可能で、頬粘膜の所見は苔癬様反応と一致しています。
エリテマトーデス
円状・全身性エリテマトーデス(SLE)の症状が口腔に出現している可能性もあります。両者の口腔症状は識別不可能です。臨床所見は扁平苔癬および苔癬様反応と類似していますが、いくつかの特徴が診断に役立ちます。エリテマトーデスでは病変の中央部に潰瘍もしくは紅斑があり、その周囲には放射状に広がる線条がみられることが多いのですが、これに対して扁平苔癬では線条の分布はランダムなパターンを示すのが一般的です。また、病変は通常非対称で、硬口蓋と軟口蓋にも認められます。扁平苔癬や苔癬反応がこれらの部位に生じることはほとんどありません。エリテマトーデスは前述の2症例よりはるかに稀です。
※参考書籍
「66症例に学ぶ 歯科臨床の問題解決」
Edward W. Odell 医歯薬出版株式会社